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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

【2月28日で閉幕】ハマスホイとデンマーク絵画

2008年に開催された「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」を見逃していたので、首を長くして待っていた今回の展覧会。まず印象的だったのは第1展示室から最後のハマスホイに至るまで、多くの作品が湛えている静けさ。静けさというより沈黙と言った方が正確だろうか。とくに風景画と室内画。北欧の翳りを帯びた光がそうした印象を深めるのかもしれないが、私たちは風景画や室内画を鑑賞しながら、せせらぎの音や葉擦れや風音、あるいは人物たちの会話や食器が触れ合う音などを、知らず知らずのうちに聞き取っていたのではないかとふと気づく。音の気配のない情景を眺めるうちに、日常の諸々でざわめく心が鎮まりかえっていく……。 もうひとつの興味深い点は、19世紀前半にヨーロッパ各地で展開したリアリズムに基づきながらも、肖像画の背景や風景の細部に細かいタッチを重ねるなど、絵の具の物質性に対する画家たちの意識が感じられること。印象派以降に展開する、写真的な写実描写を超える絵画性への関心が早くも現れているように感じられた。 これら2つの特徴が凝縮しているのがハマスホイの作品。細かいタッチが紗幕のような効果を生む情景は、現実が現実のままでありながら幻想性を獲得するという稀有な体験を切り拓いてくれる。押さえた色調と秘めやかなマチエールの魅力は小さな図版では伝わらない。ぜひ実物体験を。

20/3/1(日)

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