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日本で(多分)一番多くの映画を観る(年間800本!=新作、旧作も入れると…)映画評論家

野村 正昭

映画評論家

明日をへぐる

技術は、こんなふうにして伝承されてきたんだなあと、思わず襟を正したくなるような映画だ。『鳥の歌を越えて』(14) で、キネマ旬報文化映画ベストワンをはじめ、数々の映画賞を受賞した今井友樹監督の新作は、高知県の山あいで、和紙の原料である楮(こうぞ)を栽培し、紙を漉いてきた人たちの暮らしを描いたドキュメンタリー。楮の外側を何度も何度も削り落とし、繊維だけを残す=へぐる作業をする女性たちは、気負わず、淡々と従事しているのだが、そのへぐりから1000年以上の耐久性を持つ和紙が生まれる。美しい山の風景そして鳥や動物たちの声を含めて、ひとつの文化がここにはある。効率重視の社会にはない豊かさだ。かつて東陽一監督『絵の中のぼくの村』(96) の舞台にもなった山里だが、その出演者のひとりだった原田美枝子さんのナレーションも素晴らしい。

21/9/9(木)

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