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水先案内人のおすすめ

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一度逃したら再び観る機会がないかもしれない、ちいさな芝居を中心に

釣木 文恵

演劇ライター

iaku『あつい胸さわぎ』

代表作『エダニク』をはじめ、みながこぞって彼の脚本を上演したがる。横山拓也の書く自然で細やか、余分なもののない会話が求められているのだと思う。 横山が作・演出を務めるiakuの公演を観ると、彼の演出家としての魅力にも気付かされる(iakuではいつも彼が演出というわけではないのだが、前作『逢いに行くの、雨だけど』と今作『あつい胸さわぎ』は横山演出作品)。端正でしずかな空気で始まったかと思うと、いつの間にか彼らの中に入っているような、ヒリヒリした感触を味わうことになる。 横山は、よわい人を描くのがうまい。今年4月に彼が企画集団マッチポイントに提供した脚本「ヒトハミナ、ヒトナミノ」では、地方の就労支援施設で働く人たちと、その利用者たちを描いた。今回は娘と母、そして成人がんと小児がんの間にいる、15歳〜30代の「AYA世代」と呼ばれる人たちが罹患するがんを取り上げるのだという。題材だけ取り出すと堅い芝居なのかと思ってしまうかもしれないが、大丈夫、きちんと面白い会話劇が繰り広げられるだろうことは、彼のこれまでの作品が証明している。 今回、「ハンディキャップのあるお客さまにも観劇をお楽しみいただけるよう」上演台本の貸し出し、目の不自由な方に演出家による開場前の舞台美術の案内などを行うという。観客に寄り添っている劇団は、それだけで信頼度が増す。 iakuは大阪で生まれた劇団だが、幸いにも最近東京で見る機会が格段に増えた。久しぶりに関西弁で紡がれるという部分でも、この作品への期待が高まる。

19/9/5(木)

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