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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

【公演中止】令和2年3月歌舞伎公演『通し狂言 義経千本桜』

国立劇場の皇居サイドの敷地内にはさまざまな桜が植わっており、早春から晩春にかけていろとりどりの桜が楽しめる。 その時期に合わせるように小劇場で『義経千本桜』がほぼ通しで上演される。 劇場が変わり、サイズが小さくなっても大歌舞伎と同様の舞台をつとめるのは当然で、いわゆる“媚びる”芝居はしない。だが大きな劇場に比べて一つ一つの演技に客が反応するスピードは速くなるし、また細かく隅々まで見られているのも確か。そんな濃密な空間が役者たちの心身を刺激して化学反応が生まれ、古典の新たな一面を浮かび上がらせることもあるはず。 平家討伐を掲げながらも兄の源頼朝に疎まれ都落ちした義経。歌舞伎の演目の主人公達の中でもまず随一といっていい英雄中の英雄だ。その名を冠する名作義太夫狂言だが、義経はこの作品では狂言回しのようにふるまいながら流転の日々を過ごす。そんな中で平家のために、義経のために、運命を大きく変えざるを得なかった人々の物語だ。 尾上菊之助が佐藤忠信・源九郎狐、平知盛、いがみの権太の“三役完演”に挑む。子供のころからの夢、憧れだったこの三役を通しでつとめるにあたり、「自分の全てを懸けて体当たりしたい」と気合十分。またこの狂言について「勝者のいない、人間の業の物語だと思う」とも。“悪党”だけれどどこか憎めない権太は初役だ。洗い上げられた音羽屋の権太をしっかりと受け継ぐに違いない。また自分の女房子供を犠牲にして縄をかける場面について「いつ何度見ても感極まってしまう」とも。 この三役にまっしぐらに突き進む菊之助を見逃すな。

20/3/2(月)

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