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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ドッグマン

なんと苦しく、なんとやるせなく、なんと人間味溢れているのでしょうか! そして新人俳優でカンヌ映画祭主演男優賞を受賞した理由は、決して見栄えが良いとは言えない主人公になぜか興味がわき、いつの間にか主人公の感情を自分も体験しているという力を持った映画だから。そう、主人公への圧倒的な好奇心! いかにも騙されそうな風貌の主人公が、生きていくために街の人たちと調和を取ろうと、分け隔てなく仲良くするうちに、気づけば取り返しのつかない方向へと進んでいく悲運。実話がベースとはいえ、監督が生み出したオリジナル主人公は饒舌ではなく、彼がどんな気持ちなのかをすべて行動で見せるので、観客は心がざわめくのを止めながら見守り続けるしかないのです。 そしてこの映画の象徴的といえる冒頭のシーン。唸り声をあげる大型犬が今にも噛みつきそうな表情で鎖に繋がれていて、その犬に向かって優しい口調で話しかけ、体を洗っていくトリマーの主人公の姿が映し出されます。 もしかしたらこれが、主人公の男自身が思う“自分の特技”であって、気性の荒い者でも自分は手なづけられるという思い込みが、後の運命を翻弄する要因なのかもしれないってこと!? 皆と仲良く、波風立てずに生きていきたいと思っている人が、何が原因でこんな目に遭ってしまうのか? その答えに正解はなく、さまざまな解決法を思いついても良い結果を想像しづらいのが正直なところ。しかもイタリアの小さな港町が舞台という、村社会が巻き起こす人間関係のもつれはどこでも起こりうる話なので他人事とは思えないのです。だからこの映画が興味深く、心に刺さったまんまなのでしょうね。

19/8/20(火)

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