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水先案内人のおすすめ

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ダメな人が出てくる情けない話やバカげた映画を中心におススメ

村山 章

映画ライター

羊飼いと風船

チベットの映画監督ペマ・ツェテンの作品が、ついに日本で劇場公開された。すでにフィルメックスのような映画祭では注目を集めており、筆者も朴訥な男が悪い女にハマる姿にチベット文化の衰退を重ねた『タルロ』の、ブラックコメディと悲劇の奇妙なブレンド具合に大いに引き込まれたクチである。 そして晴れて劇場公開となった『羊飼いと風船』は、中国が推し進める現代化政策とチベットの伝統文化の相克を、より複雑な形で、それでいてシンプルな映像美に落とし込んでいる。時代設定は1990年代のようだが、時代のアップデートに追いつくのが正しいのか、立ち止まって足元を見つめるのが正しいのか、誰もが途方に暮れずにいられない現代社会とリンクして、遠い場所の話のようでいて、なんともリアルな重みがズシリとくる。 そして一枚の絵面に当惑が象徴された寓話的なラストに、ペマ・ツェテンは現代のモフセン・マフマルバフなのかも知れないと思ったりした。いや、マフマルバフだって現役なんですけれども、ミクロからマクロを見据える監督の活躍はいつだって大歓迎である。

21/2/3(水)

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