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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

サムジンカンパニー1995

1990年代に韓国で実際にあった汚染水流出事件をベースに、企業を内部告発した女性社員たちがさまざまな圧力を受けながらも事件の真相に肉迫していく姿を描いた物語です。公害企業を告発して賠償金を勝ち取る話としてはジュリア・ロバーツ主演の『エリン・ブロコビッチ』が有名ですが、本作品は社会派の味付けも施しつつ、サスペンスとコメディーが巧みに交差するポップな展開が鮮やかで、観終わった後はちょっと元気をもらったような気持ちになれる作品です。 題材が公害事件の内部告発と聞けば、なかなか表沙汰にはならないだろうし、仮に表面化しても会社側からの「犯人捜し」は熾烈で陰湿なものになりそうです。そこを意識したのでしょう。イ・ジョンピル監督は主人公の告発者を男性社員の補助業務ばかり押し付けられうんざりしている高卒8年目の女性社員3人としました。みんな同期で元気いっぱい。部署は違えど仲間意識は強烈で、事件の本当の黒幕は誰かを追い求めていきます。その姿はカッコよく、女性差別に今なお苦しんでいる人たちへの応援歌にもなっています。 それにしても最近の韓国映画には『はちどり』や『82年生まれ、キム・ジヨン』など過去を振り返る、どちらかと言えばシリアスな作品が目立ちます。そんな中で本作はエンタメ色を意識して90年代を回顧する作品なのかもしれません。

21/6/24(木)

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