2017年2月にマレーシアのクアラルンプール空港で、金正男が暗殺された。まさに公衆の面前でふたりの若い女性に毒を押し付けられて死亡したのだ。暗殺計画を指揮したと見られる北朝鮮人のグループは誰ひとり罪を問われず、実行犯の女性のひとりは「日本のテレビ局のイタズラ番組の収録だと思っていた」と主張した。 日本のニュースでも取り上げられていたので覚えている人は多いはずだが、一体あれはどういう事件だったのか？　暗殺を命じたと思われる金正恩は、素知らぬ顔でアメリカや中国を相手に外交を繰り広げているし、実行犯の女性たちはその後どうなったのか？ 本ドキュメンタリーは、そんなモヤモヤすることだらけの奇怪な事件の全貌をつぶさに教えてくれる。そして、加害者であり、ある意味で被害者でもある女性たちが、各国の事情に振り回され続けた裁判の一部始終を通じて、「なぜこんなことがまかり通るのか？」というやるせなさを突きつける。あらゆるニュースが流れ去っていくからこそ、ぜひ観て欲しい1本だ。

20/10/30(金)