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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

盗まれたカラヴァッジョ

1969年、シチリア島パレルモの聖ラウレンティウス礼拝堂から、17世紀イタリアのバロック絵画を代表する画家カラヴァッジョの祭壇画が忽然と姿を消した。この事件は迷宮入りとなり、50年経った今も未解決のまま(もちろん作品は行方不明)。背後にマフィアが絡んでいると言われるだけに、事件の闇は深そうだ。 この闇をめぐって、映画会社の秘書ヴァレリア(実は人気脚本家アレッサンドロのゴーストライター)、脚本家アレッサンドロ、映画プロデューサー、マフィアの手先の貴族とマフィアの面々が絡み合い、殺人+暴行+陰謀等々が次々と展開するスリル満点のサスペンスに仕上がっている。 見知らぬ男から得たカラヴァッジョ盗難事件の情報を元に、アレッサンドロのために脚本のプロットを作成したヴァレリア。ヴァレリアが書いた脚本の情報源を突き止めようとするマフィアと、身分を隠しつつ闇を暴こうとするヴァレリアとの攻防。ヴァレリアを裏から支える謎の男。そして政治家のブレーンを務める切れ者の母親。 盗難事件を主題とする劇中映画撮影現場とカラヴァッジョ作品の行く末が交錯するトリッキーな面白さに唖然呆然。この「劇中映画の物語」という二重構造が見どころ(この映画の原題は劇中映画のタイトルでもある「名もなき物語」)。そして、実は一枚の絵をめぐる「家族の再生の物語」でもある。ラストには思わずニヤリ。洒脱でほっこりする仕上がりなのでございます。

20/1/29(水)

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