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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

青木野枝 霧と鉄と山と

水蒸気の粒のように、世界は小さなまるが集まってできている。佐久島など野外で見る青木野枝の鉄の彫刻は、自然に還っていくものを思わせるが、美術館の室内で見ても万物の循環を思わせる。鉄を溶断していると、鉄のなかに光が見えるのだという。それを聞いて、古代、イヌイットが隕石のなかの鉄でつくったナイフを思い出した。宇宙のさざなみ。ガラスや波板が光を受け取り、反射させる。こんもりとした石膏の山肌は、雪面を思わせる。ガラスケースのなかは霧の風景みたいだ。 東京での美術館での個展は2000年の目黒区美術館以来だという。その間、文化人類学的なことにも関心の高い青木は、越後妻有や瀬戸内で集落のお年寄りの語りも聞き、身体を動かしてきた。2019年は、長崎のキリシタンや原爆の歴史にも立会っている。それは使い古された石鹸を重ねた彫刻にも表れている。風通しがよく、人が通り抜けられる彫刻をつくってきた青木が「山のような存在をつくりたくなっている」と語っていたが、そんな人々の歴史も小さなまるとなって寄り集まり、塊となっているように感じる。

20/1/4(土)

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