Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

燃えよ剣

土方歳三の岡田准一、近藤勇の鈴木亮平、そしてヒロインお雪の柴咲コウと、大河ドラマで主役だった三人が共演する時代劇大作。鈴木は大河では西郷隆盛だったのに、今度は新選組の組長だ。 土方歳三の最後の闘いとなった函館五稜郭から映画は始まり、土方自身が回想していく形で進む。 原作ではそれなりにページが割かれている京都へ行く前の話は、かなりカットされている。原作の前半はほとんどがフィクションなので、そこをカットしたのは、史実として描きたいという意図だろう。原作の架空の人物で、映画にも登場するのは柴咲コウが演じるお雪くらいか。 池田屋事件のシーンのオープンセットがリアルで、見もの。 新選組は「負け組」であり、土方も非業の最期を遂げる、何ら実績のない人物だ。しかし人気がある。それは、歴史に翻弄されるしかない、普通の人々の代表だからだ――と思うかもしれないが、この映画の土方は、そうではない。歴史を変えようとして挫折した人物として、くっきりと描かれる。流されて生きた人ではない。 歌舞伎役者の尾上右近が会津藩主・松平容保を演じ、これが涙を誘う。この藩主のほうが、歴史に、権力に翻弄されている。右近は歌舞伎では女形が多いが、母方の祖父が鶴田浩二なだけあり、武士の役も合う。同世代の若い歌舞伎役者、坂東巳之助も孝明天皇の役で出ており、好演。

21/10/9(土)

アプリで読む