このドキュメンタリーを撮ったエミール・クストリツァという人は、『オン・ザ・ミルキー・ロード』（これが一番好き）など、いい映画を撮る監督なのだが、本人もいい顔をしている。旧ユーゴスラビアのサラエボ出身の彼が南米ウルグアイの大統領に興味を持ったのはなぜなのだろう。ムヒカさんは大統領になりながらもボロボロの青いワーゲンに乗り、ぜいたくな暮らしをしなかった。「大多数に選ばれし者は、上流階級のようにでなく、大多数と同じように暮らさなければならない」という言葉には心打たれる。我が国の政治家たちに聞かせても多分馬耳東風だろうが。クストリツァ監督がムヒカさんにインタビューしている様子がちょっとほほ笑ましいのだが、「銀行強盗もしたな」「銃で撃たれて、体中に十数ヶ所の傷がある」など、衝撃的な話も次々聞ける。なによりも感動したのはずっと連れ添った奥さんとの2S。最後のシーンで彼らの昔からの写真のモンタージュには涙が止まらなかった。ちょっと、お薦めです。

20/3/25(水)