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堀 晃和
ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。
デッド・ドント・ダイ
20/6/5(金)
TOHOシネマズ 日比谷
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984年)などで知られるインディペンデント映画の雄ジム・ジャームッシュ監督が、ゾンビを撮るとは思わなかった。監督は、インタビューで「ゾンビは、お互いへの思いやりや意識を失うことへのメタファーだ」と語り、現代人の振る舞いが「ゾンビ化している印象があるからだ」と撮影動機を語っている。ゾンビ作品はこれまで何本も製作されてきたが、メッセージを込めやすいキャラクターとして、映画作家にはこの“生ける死体”が魅力的に見えるのだろう。 舞台はアメリカの田舎町。自然に囲まれた長閑な町だが、夜の時間帯になっても辺りが明るいなど奇妙なことが続いていた。ある日、町のダイナーで経営者と店員が惨殺死体で発見される。現場に臨場した警察署長のクリフ(ビル・マーレイ)と巡査のロニー(アダム・ドライバー)は内臓が飛び出た死体を見て……。 蘇ったゾンビに住民が次々に襲われていく様子が、シリアスかつコミカルに描かれる。特にコーヒーを求めて惨劇を起こしたゾンビがユーモラスだ。生前の物欲に執着して歩くゾンビたちの姿は、監督が言うように「自分のことしか考えられなくなっている」現代社会を想起させる。
20/6/6(土)