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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

名も無い日

「どんどん古いもんは忘れられていくんかなぁ」という台詞が身につまされる。 それは古いだけでなく、居なくなった人も、会わなくなった人も、という意味にも例えられるから。忘れられたくないし、忘れたくない。きっと誰もがひっそり感じている思いだと信じたい。 カメラマンである日比遊一監督らしいレンズの効果を多用し、カメラマンならではの面白い視点で映し出される世界が美しい。 街や部屋に馴染む人々の姿。人は暮らしの中で人と共にドラマを作り上げているんだと映画から実感してしまう。 個人的にもカメラを趣味とする永瀬正敏がカメラマンの役なので、持ち方も構え方も手へのフィット感も本物。プロの役というのは普段どれだけその仕事に興味を持っているのかが問われるが、まさにこの役で実証されている。 家族が対峙しなければならない居なくなってしまった家族への思いを、記憶の断片から綴る構成にも魅せられた。 監督の実体験だからこその熱量と相まって、本人が目にしていた光景を再現したからか、広い画の中でワヤワヤと会話をしている人々が手に届くような錯覚にまでとれる演出の力。 役者との信頼関係を感じる臨場感ある演技と、ゾワっとする編集や岩代太郎が生み出す音色の寄り添い方。 役者の並びにも興奮する。この俳優たちが揃った画が見たかった。しかも皆、耳心地が良い声をしている。監督は声フェチかもしれない。

21/5/21(金)

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