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ノージャンル、ノーボーダー。個人的アンテナに引っかかるもの

佐藤 久理子

パリ在住、文化ジャーナリスト

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~

1年ぐらい前に初めて海外の映画祭で観たときからずっと心に残り続けている作品。ミュージシャンが聴覚を失う、こんな酷いことはない。主人公はメタル系ハードコアバンドのドラマーで、爆音、激音で叩きまくる。そんな彼がある日、鼓膜の異変に気づき、やがて徐々に音が聞こえなくなっていく。その恐怖といったら。 自分にはこれしかない、と思っていたものが奪われ、生きる目的を失う。これは誰にでも起こり得ることだ。そこからいったいどうしたら復活できるのか、できないのか。何にすがるのか。本作はその困難な過程を鮮烈に描く。 と同時に、失ったことで見えてくるものがあり、新しい “知覚の扉”が開かれることも教えてくれる。 メタル系ドラマーが似合いすぎるリズ・アーメッドの演技が、またしても素晴らしすぎて、胃がきりきりと絞られるような気がした。

21/10/3(日)

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