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パール兄弟、作詞家、プロデューサーとして、音楽を中心に活動中

サエキけんぞう

ミュージシャン

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった

ビートルズも多大な影響を受けた、ロック界の最重要バンド、ザ・バンドのドキュメンタリー。僕をはじめ、大多数のファンは、このバンドの度重なる「アンソロジー商法」に辟易としている。ベスト盤からCDボックスへ。さらに巨大なCDボックスからライブ映画のボックスへ。根気よく付き合い続けてきた。それが今回は、集大成的なドキュメント映画、警戒心を強めざるを得ない。「一体どんな手を打ってくるんだ?」しかし、やはり唸らされてしまった。 まずはボブ・ディランとともに借りていたニューヨーク州の家「ビッグ・ピンク」でのレコーディング風景だ。ロック好きの誰もが憧れ続けていたウッドストックの伝説の小屋。その演奏風景は、渇望をあざ笑うかのように、新鮮でバンドの本質をえぐり出すものだっった。まるで神話が開帳されたような堂々たる風景。 米南部の感覚を伝えるキーパーソン、ドラマーのリヴォン・ヘルムがバンドを脱退し、復帰するゴタゴタの真相も、道のりの困難さと必然性を示すように挿入される。ロビー・ロバートソン夫人も恐らく初めて大々的に登場し、知的な横顔による証言が、客観性に花を添える。まるで劇映画のように。 人生の初期からドキュメントを作ろうと生きていくわけにはいかない。人間は出たとこ勝負だから面白い。人生のフィナーレにこれだけの映像作品ができるということは、それなりの内実が音楽にないと無理なのだろう。と変な感心をしてしまった。 ロックファンには絶対に見逃せない映画である。

20/10/21(水)

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