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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

石内都展 都とちひろ ふたりの女の物語

2018年、いわさきちひろの生誕100年記念「Life展」で、ちひろが広島で被爆した子供たちの体験を綴った詩や作文に絵を添えた絵本『わたしがちいさかったときに』と、写真家・石内都が撮影した広島の被爆者の遺品の写真によるコラボレーション展が長野県の安曇野ちひろ美術館で開催された。 石内はそれまでちひろについて詳しくは知らなかったという。だが、ちひろと2歳違いの石内の母・藤倉都の人生がちひろの人生と不思議なほどシンクロしていることに気づく。二人とも満州で結婚するも夫を亡くし、その後七歳年下の男性と再婚。藤倉都はドライバー、ちひろは画家、二人とも職業婦人として自立した人生を貫いた。 展覧会のメインは、石内が母の遺品を撮影した「Mother's」(2000〜07年)27点と今年撮り下ろしたちひろの遺品写真「1974.cnihiro」29点。遺された衣服や化粧品のクローズアップ写真には、二人の身体の温もりさえとらえられているようだ。決して交差することのなかった二人の女性の人生を、娘として生きる一人の女性が繋ぐ。二人の詳細な年表の後半には石内都自身のデータが加わり、20世紀を語り継ぐ次世代への視座が浮かび上がる。「これは二人の女ではなく、三人の女の物語なのです」(ちひろ美術館館長の松本猛氏の言葉)。激動の時代をしなやかにしたたかに生き抜いた女たちの軌跡。心してたどってみたい。

19/11/30(土)

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