いつの間にか『ジョーカー』を出し抜いて、アカデミー賞最有力候補に踊り出た本作。何がそんなにすごいのか、と言えばそれは、一にも二にも映像に尽きる。いや厳密にはカメラの動き、と言うべきだろう。つまり全編あたかも1カットで撮影したように見えてしまう、ノンストップで流麗なカメラ。いったいこんな映像をどのように撮ったのか、ということを考えさせずにはおかない。名匠ロジャー・ディーキンス（撮影監督／『ブレードランナー 2049』など）恐るべし。 だがこれはあくまで個人的な見方で、一般的にはそんなことは忘れて、第一次世界大戦の最前線に重要な伝令を託された歩兵ふたりの行方にはらはらしながら、ヒューマニズム溢れるこの物語にじっくり浸るのが、正しい見方かもしれない。 いずれにしろ、“映画を観た”という感慨をどっぷり与えてくれる戦争ドラマである。

20/2/10(月)