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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在

圧倒的な彫刻の存在感。昨年、ミヒャエル・ボレマンスとの二人展(金沢21世紀美術館)で好評を博したマーク・マンダースの、こちらは日本初個展だ。オランダ生まれ、ベルギー在住のマンダースは、18歳のときに自伝を書こうとして思いついた「建物としての自画像」と名づけたアイデアを軸とし、言葉では実在しないものを彫刻などで表現し続けている。ちなみに好きな作家はカフカだそう。 作品と作品とが呼応するよう距離をよく考えて空間をつくると、「そこを通る人の目が映画のカメラのようになってぐっと入っていく」と彼は語る。あたかも時間が凍結し、すべての作品が同じ瞬間に存在するような“建物”内を次の部屋、次の部屋へと突き進んでいく。 家具と人物が一体になったような像、半月のように横たわる顔、顔の一部に垂直の板が差し込まれた巨大な4体の胸像。《サモトラケのニケ》のように、どこかが欠落しているとかえって想像を掻き立てる。半透明のビニールシートで覆われたアーティスト・スタジオのような空間。粘土で塑造中のように見えるが、実はブロンズで鋳造した像に彩色したもの。未完成に見えるからこそ、見る者の頭のなかで動いていく。アーティストは消えて、イメージは観客の手のなかに。

21/4/2(金)

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