評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
ドキュメンタリーの面白さを知ると映画の見方が変わる
村山 匡一郎
映画評論家、大学講師
デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング
21/6/5(土)
シアター・イメージフォーラム
世界の音楽に詳しくないため、恥ずかしながらデニス・ホーについてはあまり知らなかった。幼い頃にカナダに移住し、アニタ・ムイの熱狂的ファンとなり、1990年代後半に香港の音楽シーンに歌手として登場、中国語圏でスターになる一方、社会活動に関心を抱き、社会問題を取り上げ、自ら同性愛者であることをカミングアウトしたアーティスト。そんな彼女の活動を密着取材して描いたドキュメンタリーだ。その白眉は、雨傘運動に参加した彼女を中国政府が問題視し、レコード会社が離れたことである。権力による政治的抑圧はいつの時代にも見られるが、そこで問われるのはアーティストとしての生き方の問題だ。歌手生命を危うくする厳しい状況下にあるデニス・ホーの生き方は、何といっても魅力的である。
21/5/24(月)