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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング

香港ポップスのアイコンであり、同性愛者であることを初めてカミングアウトしたデニス・ホーが「雨傘運動」にも参加して最前線で座り込みを続けるなど民主活動家へと変貌していく姿を追ったドキュメンタリーです。 中国との関係を配慮し世界的な化粧品メーカーがコンサートのスポンサーを降りるなど徐々に締め付けが強くなる中、300件を超える小口スポンサーを集めた公演では「がんばれ」という声がかかります。デニスが感極まって歌えず、「一緒に歌おう」と言えば会場からは「いいよ」の応答。舞台と客席の間には信頼できる仲間同士という空気が流れています。 とはいえ「高度な自治」をうたった香港の一国二制度はつぶされたも同然。なのに政治的にも経済的にも強固なはずの中国はこれ以上何を恐れるというのでしょうか。それはもしかしたらデニスの歌でしょうか。たしかに歌には人の心を団結させる力があります。しかも彼女と観客の間には信頼という言葉で結ばれた強く連帯する心があります。それがデニス・ホーの武器でしょう。でも一人では闘えないですね。映画の中でも繰り返し流れる歌を反芻しながら応援したいものです。

21/6/1(火)

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