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山内宏泰
ライター
木村和平 写真展『The Other Side of the Window』
20/12/10(木)~21/1/18(月)
book obscura ブックオブスキュラ
詩的だけど、私的じゃないんだな。 新作写真集『あたらしい窓』をまとめ、同テーマにて小さい書店で個展を開いている木村和平の作品を目にして、真っ先に思うのはそんなことだ。 身の回りのことにカメラを向け続けるこの写真家が提示する写真はいつも、観る側に何かを思い起こさせる。「これはかつて自分も知覚したことがある、いったんは短期記憶に入れたはず」と、たしかに感じさせる光景ばかりなのだ。 でもそれらの「見覚えある光景」は、ささやか過ぎたり脈絡がなさ過ぎたりして、長期記憶として保存するには至らなかったのだった。 「私の物語」をかたちづくる重要な一片とはなり得ず、詩的な断片として通り過ぎてしまったものごと。それらをふたたび思い出す手がかりに、木村の写真はなってくれる。 彼の写真が誰にとってもどこか懐かしく、普遍性を帯びた雰囲気を纏うのはそれゆえだ。若き写真家が築き上げた独自の世界に、展示と写真集双方のかたちで触れてみたい。
20/12/24(木)