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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

グレース・オブ・ゴッド 告発の時

もし自分が被害者の家族なら? もし自分が加害者の同僚なら? そしてもし自分が被害者なら? 何が正しくて何が間違っているのか? それは明らかに仕事(聖職)でボーイスカウトを担当しながら、そこに入ってくる無垢な少年に性的な行為をしたプレナ神父であるのは間違いないのです。ただ、25年、30年が経ち、大人になってから勇気を出して声をあげた多くの被害者側のさまざまな考えをカメラに捉えていることが、実はこの映画のテーマな気がしてならないのです。 映画では、彼らが被害者の会を作り、議論を生み出す中で、行き過ぎのようにも感じる発言や、発想が出てきます。それに対して、否定的な仲間の声や、賛同できないと声に出す者がいたり、途中で被害者の会の広報チームから抜けてしまうメンバーがいたりと、彼らなりの理由が映し出されているのです。そして現在の立場から「私は被害者です」と声にも出せない人もいたり。 事件的には時効だから罪には問われないのか? ならば被害者である人々が、声を大にして社会に訴え裁くしかないのか? 教会という強大な力によって守られてしまった罪人が、罪を認めて謝れば心は癒されるのか? カメラが加害者と被害者の顔にズームをした先に、私たちは何を感じとることができるのか? 湧き上がってきた感情さえも、観る人によって違うのかも知れないと思ってしまうのです。 被害者である、ドゥニ・メノーシェ演じるフランソワの溢れ続ける怒りも、スワン・アルロー演じるエマニュエルの孤独感も、彼らを取り巻く家族の気持ちも、果たして消える日はくるのか? フランソワ・オゾン監督は、被害者がその体験をきっかけに心に二次的な障害を併発し、ときには兄弟にも影響を与えてしまうことまで描ききったのです。事実を映画化するうえで、偏った見方にさせないためにさまざまな状況の登場人物を用い、多角的にこの事件を見てもらおうとオゾン監督は思ったのかも知れません。 これは社会問題の闇を描いた映画であり、心の後遺症についての映画であり、人の心の繊細さを描いた映画なのです。それは決して他人事ではなく、私たち自身の問題でもあるのです。

20/7/15(水)

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