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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

アウシュヴィッツ・レポート

この映画の後、『ホロコーストの罪人』というノルウェー映画も公開される。 2作を観ると、ナチスのホロコーストについては「語り尽くす」なんてことはありえないのだと、よく分かる。ユダヤ人はヨーロッパ各国にいたし、ナチスヨーロッパ全土を征服しかけたので、各国ごとにホロコーストに加担した人、巻き込まれた人はいるのだ。 この映画はアウシュヴィッツからスロバキア人の青年2人が脱出する話。自分の命を守るためではなく、そこで起きている現実を外部に伝えるためだ。 前半の収容所のシーンは辛い。暴力シーンは少ないが、はやく終わってくれないかと思ってしまうほど、寒さと痛みを伝えてくる。体調のいいときに観るのをお勧めする。それくらい、じわっと伝わる恐怖だ。 たしかに、普通の感覚では「そんなバカげたことが行われているはずがない」と思う。信じない人の感覚は正しい。それと現実とのギャップの激しさ。 彼らのレポートがどのように役立ったかが明かされ、少し救われる。 エンドロールで、最近の著名な政治家のヘイトスピーチが流され、それが「過去の歴史」ではなく、「現在の現実」でもあることを伝えてくる。 忘れてはならない歴史を伝える、観なければならない映画だが、もちろん、楽しい映画ではない。

21/7/1(木)

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