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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

日産アートアワード2020

日産自動車が支援する日本の現代美術アワード。4回目の今年は8月1日よりファイナリスト5名の展示があり、8月26日グランプリが発表された。選ばれたのは、上海生まれ、青森を経て東京在住の潘逸舟(はん いしゅ)だ。これまで「移動」をテーマとして表現してきた彼は、シルバーのエマージェンシーシートを素材として制作した3m級のテトラポット(消波ブロック)と映像作品をインスタレーションした《where are you now》を発表。一つのテトラポットが群れから離れて海に出ていくという映像作品は、パンデミックによって移動を制限される現況に対する妄想から生まれたという。人間が恣意的に引く境界線に対し、自然の方が人間から遠ざかっているようにも見える。大海原の視野で、漂流する時代を反映したような作品だ。 ほか4名も甲乙つけがたい。風間サチコによる、戦争で中止になった1940年の幻の東京オリンピックを題材とした木版画《ディスリンピック》は、現在延期となった東京オリンピックと符合する。新作とともに、負のレガシーへの刃もシャープだ。空気中の水分を集めて可視化するガジェット(装置)で、自然とメディアテクノロジーの関係を作品化した三原聡一郎。廃材などを詩的な彫刻に変えた土屋信子。 また、オーディエンス賞が今年もあったら和田永だったんじゃないだろうか。扇風機のギターやブラウン管テレビのドラムなど、古い電化製品を楽器に再生する「電磁楽器」。これらの部品をインドネシアなど5か国の人々に送り、それぞれの国の中古品と合わせてどのようにつくり演奏するか、ドキュメント映像の円形空間。2016年の県北芸術祭(茨城県)では市民とともに大盛り上がりのライブを見た。コロナ禍明けの《無国籍電磁楽団》ワールドツアーを夢見て。

20/8/29(土)

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