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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

国立劇場 令和3年6月歌舞伎鑑賞教室『人情噺文七元結』

昨年はことごとく中止となった国立劇場の歌舞伎鑑賞教室。今年は今のところ予定通り上演されそうだ。 6月の演目は三遊亭円朝の落語を原作とした『人情噺文七元結』。もとゆいと書いて「もっとい」と読む。髷を束ねる白い紙のひものことだ。主人公の左官の長兵衛は博打好きで家賃も払えないほど困窮している。ある日娘のお久が家出してしまい、吉原の遊郭・角海老にいるという。慌てた長兵衛は角海老に行こうとするが、出かけたくても着ていくものがない。しかたないので女房お兼の古着を借りて・・・。というくだりから始まる人情芝居。 長兵衛とお兼の職人夫婦が猛スピードでまくしたてるけんかの面白さや、娘お久のほろりとくる親思いの台詞、角海老女房お駒の気っ風の良さ、死のうとする文七と長兵衛の妙におかしいやりとり、そして意外な結末。涙と笑いの一本だ。 初演の五代目尾上菊五郎はリアルな左官の暮らしぶりを表現するために、出入りの大工に話を聞いたという。左官の家ならどこでも鏝(こて)だけは大事に備えてあると聞き、長兵衛宅の壁に並べることにした。道具や拵え一つに、当時の役者達の新作にかける思いが伝わってくる。 このお芝居、悪人が一人も出てこない。女郎の一人に至るまでしどころのある気のいい役ばかりだ。台詞も聞き取りやすくわかりやすい。このお芝居を見てより歌舞伎の他の演目や俳優達に関心を持つようになったり、あるいは落語を聞き比べてみたり。そんなきっかけになってほしい一幕だ。

21/5/22(土)

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