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ノージャンル、ノーボーダー。個人的アンテナに引っかかるもの

佐藤 久理子

パリ在住、文化ジャーナリスト

Summer of 85

これほど真っ直ぐな情熱をぶつけた眩しい青春映画は久しぶりだ。しかも監督が、『8人の女たち』や『婚約者の友人』など、屈折系として知られるフランソワ・オゾンと知って、なお驚く。 原作はオゾンが青春期の1985年に読んだイギリス文学で、それをフランスに移し変え脚色した、パーソナルな作品だという。 16歳のアレックスが2歳年上のダヴィドに出会い、恋をする。アレックスにとって、それだけで世界が一変するような体験だが、破滅型のダヴィドにとっては、人生のアバンチュールのひとつでしかなく、その温度差がやがて悲劇を招く。 きらきら輝く海にセーリングに出るふたりの姿や、バイクのうしろでダヴィドの肩にもたれて風を感じるアレックスの横顔は、せつないほどにロマンが溢れている。ロッド・スチュワートの歌う「セーリング」も、絶妙な使われ方で泣ける。

21/8/12(木)

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