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水先案内人のおすすめ

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ノージャンル、ノーボーダー。個人的アンテナに引っかかるもの

佐藤 久理子

パリ在住、文化ジャーナリスト

ジョーカー

世界三大映画祭のひとつ、ヴェネチアで金獅子賞を受賞したことが証明するように、本作は娯楽性だけではない、傑出した個性と完成度を誇る。おそらくは予想を超えるインパクトを観た者に与えるだろう。 悪の誕生を描くのだから、明るい話のわけはないが、ジョーカーになる以前のアーサーがここでは、繊細で心優しい人物として描かれる。「どんなときにも笑顔を絶やすな」と母親に育てられたことで、すべての痛みを内に秘め、人に幸福な笑いをもたらすことだけを夢見る。そんな人間が、ゴッサム・シティの殺伐とした世の中では暴力の標的となるのだ。 悪の権化を生み出した張本人は社会、つまりは我々ではないのか、ということを突きつける本作は、だからこそたまらなく痛い。追い詰められた人間の狂気を全身から発散させる、激やせしたホアキン・フェニックスの姿が脳裏に焼きついて離れない。

19/10/5(土)

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