老夫婦が銀行強盗で奪った2000万円と共に失踪し、事件が時効になった10年後、遺された4人兄弟が遺産相続の話し合いのために集まるが……。そんな衝撃のオープニングから生々しい展開になる本作は、主人公の長男・小鉄に扮した草彅剛の他では見られない剥き出しの感情、クズっぷりに唖然としてしまう衝撃のブラックコメディ。 だが、そこで炙り出されるのは、兄弟ならではのリアルな衝突とそれぞれのポジションの他の兄弟に対する嫉妬や羨望だけに、“分かる、分かる”が連続する。中村倫也が体現した甘ったれた三男も秀逸で、その思いがけない言動にもビックリ！　 個人的には遺産分与をめぐる兄弟のバトルの場にいるのが辛くなり、隣の部屋に移動してボ～っとソーメンをすする小鉄の妻を演じた尾野真千子がお気に入り。そこから兄弟の切っても切れない絆や親子の想いを立ち上げる、タイトルを象徴する怒涛のクライマックスも圧巻だ。 思いがけない事件で一時は公開が危ぶまれたが、『箱入り息子の恋』(13)、『ハルチカ』(17)などの市井昌秀監督が12年間温めてきたオリジナルシナリオを執念で実写化したこの異色の家族の映画が埋もれなくて本当によかった。見逃せない！

19/9/3(火)