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山内宏泰

ライター

田中一村展 ―千葉市美術館収蔵全作品

前景に木々などを配して、その向こうには海原が覗く……。南国情緒あふれる光景を、琳派や浮世絵版画のような日本美術特有の構図で精細に描いて人気なのが、田中一村である。 1908年に栃木で生まれた田中は、千葉に移り住んでみずからの画業を成していったが、激動の昭和の時代の流れに影響された面もあったか、50歳を過ぎてから奄美大島に居を構えた。今展出品作《アダンの浜辺》など、彼の代表的な作品イメージは、晩年に奄美で描かれたものというわけだ。 オリジナリティに満ちた奄美時代の作品は、当然ながら突如として現れ出たわけじゃない。晩年に至るまで田中が一心に絵に打ち込み蓄積してきた知見と技量が、奄美の風土という刺激を受けて一挙に溶出したというところだろう。 今展では初期から晩年まで、田中一村の画業を時代順に丁寧に追いながら見て回れるのがうれしい。ひとりの画家の遍歴をじっくり辿るのは、こんなにも愉しいことだったかと改めて感じさせられるのだった。

21/1/31(日)

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