Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

女たち

篠原ゆき子は好きな女優の一人だ。映画を中心に、インディーズからメジャーまで幅広く活躍。最近はドラマ『相棒 season19』にもレギュラー出演し、ハリウッド映画『モータルコンバット』も控えている。 東日本大震災後の内部被曝をテーマにした『おだやかな日常』でのフリーライター役、騒音おばさんをモチーフにした『ミセス・ノイズィ』の騒音おばさんとトラブルになる作家役が印象的だった。“もっともっと注目されてもいい女優さんなのに”と思っていたら、チームオクヤマの奥山和由氏も同じ気持ちだったらしい。奥山氏は、篠原が実力に反して伸び悩んでいると感じ、この作品を企画し、主演に起用したのだという。メガホンを取ったのは『おだやかな日常』の内田伸輝監督。 舞台はコロナ禍の今、山間の小さな町。体が不自由な母親(高畑淳子)の介護をしながら、保育所で働く美咲(篠原)。ホームヘルパーとしてやってくる直樹(窪塚俊介)とのあいびき、養蜂場を営む親友(倉科カナ)との語らいのひとときが心のオアシスだった。しかし、恋人の裏切りが発覚し、親友は突然、自殺してしまう……。コロナ禍前にあった企画をブラッシュアップし、コロナ禍の日常を盛り込むことで、ヒロインのギリギリ感が、より切実になった。あのアベノマスクも劇映画初登場かもしれない。 しかし、このヒロイン役は難役だ。どこにでもいそうな一人の女である。かたや、脇のキャラの方が“クセが強い”というか、色が強い。高畑は半身不随、言葉も不明瞭な老いた母親を、樹木希林をほうふつさせる迫真の演技で見せ、倉科は鮮烈な印象を残して去っていくし、恋人の代わりにヘルパーとなるのはイラン出身のサヘル・ローズだ。篠原はほかの3人の“女たち”の演技を受け止め、主役らしく存在しなければいけない。篠原自身は「相当悩みながらの撮影だった」と振り返っていたが、きちんと役をまっとうし、彼女の代表作になっている。コロナ禍の今、悩む女性を体現した。

21/5/1(土)

アプリで読む