『仁義なき戦い』は観たことがない、というと怒られそうだが、事実だから仕方がない。あまりこの世界に興味がないからかもしれない。まさにそんな“ヤクザ”の世界を描いたのが本作だが、かなりよかった。主演の綾野剛さんがいい。カメラワークもいい（この今村圭祐という撮影監督には注目してみよう）。ある港町でヤクザの組に入ることになる男の“生き方”なのだが、あまりにも不器用ではらはらしてしまう。『新聞記者』の藤井道人監督はヤクザが住みにくくなった世界を描こうとしているのだろうが、それよりも綾野剛さんの佇まいだけで僕には十分だった。綾野さんの相手になる尾野真千子さんも、最初の学生役はちょっときつかったが、さすがの存在感で素晴らしい。女にうぶな男がどぎまぎする様子なども楽しくて、そこだけは声を出して笑ってしまった。なかなか、お薦めです。

21/1/25(月)