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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

フェアウェル

舞台はほとんどが中国国内。しかも主人公のビリーはアメリカではマイノリティに属する中国系アメリカ人なのに全米公開3週目にTOP10入りを果たすという異例の大ヒットとなりました。格差と分断が叫ばれる今のアメリカにも相互理解、共生という新たな流れが広がり始めているのかと期待させます。 物語はいたってシンプル。ビリーの祖母が不治の病にかかり、世界各地に散っていた家族が最後のお別れをするため中国に戻って来ます。でも本人には病気のことは知らされていません。孫の結婚式への参加が一家集合の理由とされています。アメリカでの生活が長いビリーには本人に伝えない“優しいウソ”が納得できません。いつ誰が本当のことを言うのかというハラハラドキドキの展開の中に文化的な違いが浮かび上がる構図です。 回診で病室に来た若い医師は留学経験があり英語がペラペラ。ビリーが機転をきかして英語で祖母の病状を聞き出すと、逆に祖母は孫娘の結婚相手にどうかと考え「先生は独身ですか」と聞く。必死な孫娘と呑気な祖母の対比も何だか微笑ましく見ることができます。 文明の衝突は暴力ばかりが突出する悲しい出来事なのでしょうか。ささやかではあっても違いを認め合うことの積み重ねを大事にしたい。ルル・ワン監督はそう願って映画を作ったのでしょう。心地いいラストも必見です。

20/9/29(火)

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