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水先案内人のおすすめ

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洋画・邦画問わずグッときたヒロインを中心に

細谷 美香

映画ライター

すばらしき世界

主人公は自分の正義に反することに直面すると頭に血が上ってしまい、何度も社会からこぼれ落ちてきた元殺人犯の三上。瞬間湯沸かし器のようだけれど情に厚く、母への想いを胸に秘めている男です。本質的な優しさを持っている彼は、世界線が違えばヒーローになれる男かもしれません。けれどもとかくやり直しが難しい、現代の日本社会。西川監督は個人を突き詰めて描けば自ずと社会を描くことになると証明しながら、この愚直な男を主人公に“すばらしき世界”とは? という問いを突きつけてきます。 これまでの西川作品以上に軽やかなユーモアがあり、教習所でつい爆走してしまうシーンや、介護施設で働きはじめた高揚感で「◯◯打ったみたいや〜!」と叫びながら商店街を駆け抜けるシーンに思わず爆笑。三上に手を差し伸べる弁護士やスーパーの店長など善人ではあっても聖人ではない人たちの描写にも、軽やかなユーモアがあります。 仲野太賀演じるテレビマンとの親子のような関係に心揺さぶられたのは、役所広司がキレたら何をしでかすかわからない三上の負の一面もしっかり表現しているからこそ。俳優、役所広司の底力をこれでもかと感じられる作品でもあります。

21/2/17(水)

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