Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

榎忠「RPM-1200」

榎忠の作品を最初に見たのは『六本木クロッシング2007 未来への脈動』展だった。暗い空間に浮かび上がるおびただしい数の金属部品。まるで近未来の都市のような重量感溢れるたたずまいに圧倒されたことをよく覚えている。 20代から独学で油彩画を描き始めるが既存の美術界の枠組みに疑問を抱き、前衛グループに参加。1970年の大阪万博に際して、日焼けした腹部に万博マークが白く残る体に褌一丁で銀座を歩くパフォーマンスを敢行(当然逮捕)。以後、身体中の体毛の右半分を剃り、1年半ほどかけて左側の体毛を剃って、その後伸びてきた右半分の体毛姿で当時共産国であったハンガリーを訪問するパフォーマンス「ハンガリー国へ半刈り(ハンガリ)で行く」)、髭面に化粧を施しピンク色のドレスをまとってカウンターに立つ「バー・ローズ・チュウ」など、1970年代に意表を突く発想の活動を次々と展開。 さらに旋盤工として働きながら夜間や週末に作品制作を行い、大砲で空砲を放ち砲弾の代わりにバラの花びらを散らす「Life Self Defense Force」や、全長13m、総重量25tというとてつもないスケールの巨大オブジェ「スペースロブスター P-81」、自作の「AK-47」と「COLT-AR-15」によるパフォーマンスやインスタレーション、そしておびただしい金属部品を一つ一つ加工し積み上げた、旋盤の回転数をタイトルとする「PRM-1200」シリーズ。奇想天外な発想だが、その発想の根っこには常に「現実社会への懸念や疑念」がある。 その一方で、ドローイングを見ると、絵画では満足できなかったという彼の身体に潜む手業の繊細さに驚く。緻密で繊細な感性と手業、そして豪快なスケールの構想が、稀有な造形実践者「榎忠」を形成している。作品のスケールはとんでもなく巨大だが、ローズ・チュウの靴やつけ胸(おっぱい)を見るとなんとも可愛らしいサイズ♡(榎忠さんは小柄なのだ)。「スペースロブスター P-81」や「バー・ローズ・チュウ」など、これまでの作品を収めたドキュメンタリー映像も貴重。 ※展覧会は会期変更の可能性あり

21/1/8(金)

アプリで読む