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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています
相田 冬二
ライター、ノベライザー
HOKUSAI
21/5/28(金)
TOHOシネマズ 日比谷
柳楽優弥は、黙っているとき、その演技的本能を爆発させる。 何かを考えているように映るときもあれば、何も考えていないように見えるときもある。 いずれにせよ、その人物の真実が、そこには刻印されている。 葛飾北斎の青年期から中年期を体現するこの映画には、無言の顔が無数にうめこまれており、その相貌を見つめているうちに、これが実在した画家の話であることなど、忘却の彼方へと吹き飛んでしまう。 人間の脳は、人間のこころは、人間の感覚は、人間のテクスチャは、人間の可能性は、人間の行方は、無限だ。 まるで、宇宙のように広大な、柳楽優弥の沈黙は、わたしたちを、解放する。 無表情とは、無限の表情のこと。 生きよう。 柳楽優弥の無表情は、わたしたちを、前に進ませてくれる。
21/5/9(日)