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パール兄弟、作詞家、プロデューサーとして、音楽を中心に活動中

サエキけんぞう

ミュージシャン

浪曲映画―情念の美学

演歌を主軸とした歌謡曲はどこから来たのか?浪曲、小唄、民謡といわれている。そんな浪曲が映画で重要なポジションとなった時代があった。1929年、それまで義太夫節で物語りを回していた無声映画から、音が映像と同期するトーキーになったことで、日本トーキー映画は極めて特殊な形態をとった。義太夫に代わる役割を、浪曲や琵琶語りに託すという浪曲トーキー、琵琶トーキーというやり方をとったのだ。その傾向は浪曲人気が衰える1950年代まで続いたという。すなわち演歌が勃興する頃合いということだ。その後、二葉百合子、三波春夫、村田英雄などが浪曲の節回しを生かして演歌、歌謡曲で成功する。 音楽面を浪曲に託したということで、これらの映画ではそんな歌謡曲のルーツ、浪曲の流行を担った頃の純然たる節回しを聴くことができる。西洋の平均律に全く侵されることのない、日本人の心そのもののメロディー。それにのって「情話」すなわち、日本人の心の琴線に触れる喜怒哀楽が描かれる。 景色は今とは全く違う、清浄な日本の原風景だ。「新佐渡情話」では、佐渡島の素朴すぎる姿、祭りの風景も大きな見所になっている。あまりにもあどけない子供、意外に線の細い青年達の姿など、思いこみによって作られている日本像を修正するまたとない機会ともなっている。

19/6/7(金)

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