Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

千葉正也個展

木材で組み立てられた空中歩道が展示室をぐるりと周回し、その両側に絵画やオブジェが展示されている。園芸的で遊具的でトンネルもある空中歩道には、なんと亀が歩いている。意外な運動量。亀があくびするのを初めて見た。 千葉は、まず紙粘土や木片で人型のオブジェをつくり、鉢植えやら工具やら身の回りの物体を並べて仮設の風景を制作してから絵画を描く。描かれた素材の質感や存在感が異彩を放ち、カオスのようでありながら周到に配置されているので、どこを切り取っても絵になる。一方で、動く生物の巨大な庭でもある。 もう一匹の亀は水槽の中にいて、ライブ映像が流れている。このように映像に映ったものや描かれたものが離れたところに実在していると奇妙な感覚になる。千葉の顔を他人の顔に描いてパフォーマンスの後、その顔を布に写し取る映像と実物のキュビスムのような展示もある。ワイプあるいは画中画のような落語の画面と彫刻のパフォーマンス映像では、ユーモアと死や暴力性の危ういバランスが映し出される。この映像は八王子郊外の共同スタジオで撮影されており、入り口にある、樹木を展示スペースと見立てる「Jointed Tree Gallery」も登場する。作品が生まれてくる場所の感覚が美術館に漂う。先の見えないコロナ禍の展示で、さらけ出すことに肝を据えたような“生きている”感がある。

21/1/30(土)

アプリで読む