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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

素晴らしきサイレント映画

『人生の乞食』9/1、3、4、6 シネマヴェーラ渋谷  特集「素晴らしきサイレント映画」(8/31〜9/20)で上映。 シネマヴェーラ渋谷 特集では8月31日から「素晴らしきサイレント映画」特集が始まっている(9月20日まで)。ケヴィン・ブラウンロウの名著『サイレント映画の黄金時代』(宮本高晴訳・国書刊行会)の刊行を記念するイベントだが、この特集の最大の目玉が『人生の乞食』(20、ウィリアム・ウェルマン監督)である。サイレントからトーキー初期にかけて、あまりに斬新なボブヘアで一世を風靡した伝説の女優ルイズ・ブルックスの代表作である。 かつて1980年代に大岡昇平が豪華本『ルイズ・ブルックスとルル』(中央公論社)で熱狂的な賛辞を捧げたルイズ・ブルックスは、当時、日本でもささやかなブームが起こり、アテネ・フランセなどでハワード・ホークスの『港々に女あり』(28)やG・W・パプストの『パンドラの箱』(29)が上映されたが、この『人生の乞食』だけは、日本では封切り以来、ほとんど見る機会がなかった幻の名画である。 虐待され養父を殺してホーボーとなったルイズ・ブルックスと彼女を救ったリチャード・アーレンとの逃避行を描くロード・ムーヴィーで、ハンティング帽をかぶった男装のルイズ・ブルックスが列車にタダ乗りするシーンの魅惑は筆舌に尽くしがたい。プレストン・スタージェス監督が『サリヴァンの旅』(41)で、やはりホーボー姿に身をやつし、ハンティング帽をかぶった男装のヴェロニカ・レイクが列車にタダ乗りするシーンは、『人生の乞食』の美しいオマージュであった。

19/9/1(日)

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