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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

ホモ・サピエンスの涙

使い古された表現をあえてするならロイ・アンダーソン監督はやはり「映像の魔術師」と呼ぶにふさわしいクリエイターです。33シーンからなる独立した映像はすべて一コマ漫画のように簡潔でありながらメッセージ性にあふれ、カットが変わるたびに想像力を掻き立てられます。 たとえば信仰を失った牧師が医院に駆け込み「どうすればいい?」と尋ねます。医師は診断せず、ただ帰りのバスに乗る時間だと告げるだけ。応対しても無駄と思ったのか、あるいは愛のない医療現場を監督は皮肉っているのでしょうか。余分な説明をそぎ落としているから想像力は無限に解き放たれていくのです。 他人の業績を妬む人やベッドの下のお金が盗まれていないかどうか不安で神経をすり減らす人も出てきます。空はどんよりと曇り、人々は無表情。まるでコロナウイルス社会をじっと耐えている今のあなたのように。 この先、世界はどうなっていくのか。映画の中の二つのシーンで監督は予告しているのかもしれません。一つはシャガールの『街の上で』にインスパイアされた監督がケルンの街の上を浮遊するカップルに惨禍の街を見下ろさせるカット。もう一つは若い女性3人がカフェの外でダンスに興じる微笑ましい場面。もちろん予告が当たるのは後者であってほしいのですが。

20/11/18(水)

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