東京新聞社会部記者の望月衣塑子の取材活動を追った森達也監督のドキュメンタリー。辺野古基地移設問題、森友問題、加計学園問題など政権に関わる疑惑を取材し、官邸での菅官房長官の記者会見に執拗に質問を投げかけて権力から妨害される彼女の姿から、現在の政治権力とジャーナリズムの置かれている状況が浮き彫りにされて目を離せない。しかも、そんな彼女の姿を追いかけるカメラがフリーの監督ゆえに限界ある状況を同時に露呈することで、新聞記者の彼女のみならずドキュメンタリー作家の森監督を含めて、多数支配の中で「i」＝個人が疎外される現在の日本社会の有様が示唆される。ラストに挿入される第２次大戦直後のフランスにおけるナチスと親密だった女性の魔女狩りの映像は空恐ろしい。

19/11/12(火)