ひたむきに夢を追う夫と、平穏な幸せを願う妻。真面目に働く人間たちがすれ違いながらもともに歩いていこうとする様をドラマチックな演出に頼ることなく、自然光の中でじっと観察するように描き出す。そんな視点から、監督が自身の家族のストーリーを誠実に描き、普遍的な作品へと昇華させたことが伝わってきて、ミナリ＝セリが生い茂る水辺のような清らかな余韻が残りました。セリフはほぼ韓国語でありながら、アメリカ南部のムードが濃厚に漂うところにも、監督のオリジナリティを感じます。 5人のキャストは、本当の家族にしか見えないナチュラルなたたずまい。中でも家族を手助けするために韓国からアメリカへとやって来た祖母を演じる韓国の国民的女優、ユン・ヨジュンは最高にチャーミング！　花札とプロレスに大興奮し、料理は苦手だけれど孫に無償の大きな愛を注ぐハルモニがオスカーを手にする予感がします。

21/3/20(土)