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水先案内人のおすすめ

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生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

ヒトラーに盗られたうさぎ

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のメガヒットにわく映画界。コロナ禍で動員に苦しんでいた映画館が活況を見せるのはうれしいが、11月は外国映画の公開が少ないのは寂しい。そんなことを思っている人にオススメしたいのが本作だ。 原作は世界的なユダヤ人の絵本作家ジュディス・カーが自身の体験を基に描いた絵本「ヒトラーにぬすまれたももいろうさざ」。 1933年2月、9歳のアンナは3つ年上の兄、演劇評論家の父、音楽家の母、家政婦とともにベルリンの大きな家に住み、幸せな日々を過ごしていた。ところが、総選挙で大勝したナチスが連立政権を樹立したことから、両親はユダヤ人迫害の危機を感じ取り、ほとんど身一つでスイスへ移住する……。 監督は聴覚障害者の夫婦とその娘の姿を描いた秀作『ビヨンド・サイレンス』(96)で鮮烈デビューし、ナチスの迫害を受けて、アフリカに移住した一家の物語『名もなきアフリカの地で』(01)で第75回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したカロリーヌ・リンク。 この監督は少女の描き方がうまい。本作でも、カーの分身であるアンナ役のリーヴァ・クリマロフスキがかわいらしい。1000人から見い出された新人子役だそうで、言葉も分からず、父親の職も定まらず、貧しい暮らしでも、明るくたくましく生き抜くヒロインを魅力的に演じた。貧しい亡命生活の中でも家族が団結し、知恵を絞る姿は、コロナ禍で生きる我々を勇気づけ、生きるヒントも与えてくれる。

20/11/26(木)

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