Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

なんのちゃんの第二次世界大戦

「なんのちゃん」といっても、南野陽子は関係ない。「南野」(みなみの)という家族が愛称として「なんのちゃん」と呼ばれている。 吹越満は普段は脇役だが、今作では主役。脇役は、プロの俳優もいるが、多くは素人で、セリフも棒読みなのだが、そこが逆に「普通の人」っぽく見える。 普通は、弱者とされる老人、女性、子供たちが、市長をはじめとする男の大人たちをじわじわと攻撃し、「いい人」はひとりも出てこない。 若い映画作家が、自分の親すら生まれていなかった第二次世界大戦に正面から取り組んだ作品。「戦争の悲惨さ」や、「平和の尊さ」をお題目のように繰り返しても、もう伝わらないよ、と言いたいのだろうか。 はたしてそういう意図があるのかすら分からないが、いわゆる「平和運動」への強烈な批判となっている。「いや、批判する気はありません。ちょっと疑問があって」というかもしれないが、「平和運動」というのは疑問すら抱いてはいけないというのが、「戦後」の常識だった。 それを「ちょっとおかしいんじゃないの」とあっけらかんと言ってしまうところに、75年という時間を感じさせる。 戦争や平和について考えたい人には必見だが、「私は平和運動を真面目にやっていると自分で思っている人」には不愉快な映画であり、そこがこの映画の面白さだ。

21/3/30(火)

アプリで読む