いままで本当に数え切れないほどの本数の映画を観てきたが、この映画は群を抜いている。 第70回ベルリン映画祭において、あまりにも衝撃的なバイオレンスとエロス描写が物議をかもしだし賛否の嵐となったものの、異次元レベルの構想と高い芸術性が評価され、銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞した『DAU. ナターシャ』がその映画。 処女作『4』が各国の映画祭で絶賛されたロシアの若き奇才、イリヤ・フルジャノフスキーは、プーチンの巧妙なやり方によっていまや忘れられつつある“ソビエト連邦”の記憶を呼び起こすために“ソ連全体主義”の社会を完全に再現するという前代未聞のプロジェクト(オーディション人数約40万人、衣裳4万着、ヨーロッパ最大のセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、制作年数15年……)に着手したが、その結果、本当にとんでもない映画が出来上がったのである。 「史上最も狂った映画撮影！」という“ザ・テレグラフ”の評は言い得て妙。これを観ると、ハリウッド製の映画が本当に子供じみたものに見えてしまう。

21/2/25(木)