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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい

この昨年12月に急逝したアンナ・カリーナのドキュメンタリーで、特筆すべきは監督のデニス・ベリーが40年にわたるカリーナのパートナーであり、その前にはジーン・セバーグの夫であったという嘘のようなアイロニカルな事実だろう。つまり、ここで描かれるアンナ・カリーナのイメージは、60年代ゴダール作品を象徴するふたりの神話的なミューズの伴侶の視点から眺められているがゆえに、全篇が<ゴダールの影の下に>染め上げられてもいるのだ。 たとえば、冒頭で、老境を迎えたカリーナが映画館の客席に坐ると、スクリーンに若き日のボブヘアのカリーナの貌が映し出される。言うまでもなく『女と男のいる舗道』で娼婦ナナが映画館でカール・ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』を観て感動のあまり涙ぐむ、映画史上でも美しいクローズアップである。この後、ドライヤーと若きゴダール、カリーナのカップルが歓談する至福の光景が流れ、不意を突かれる。ゴダールがカリーナを最初に発見したバスタブで裸身を晒すコケットな石鹼のCM、『はなればなれに』の撮影風景などのフッテージも貴重だが、父親が不在だった薄幸な幼少期、家出同然でパリにやってきたこのデンマーク生まれの少女が『スタア誕生』のジュディ・ガーランドに憧れていたというエピソードは、そのまま『女は女である』でカリーナが演じたミュージカル女優志願のヒロインに初々しく引用されていることに気づくのだ。 デニス・ベリーは、控えめながらも親密なタッチで、<ゴダールを遠く離れて>以後の軌跡を見据えながら、アンナ・カリーナという女優の多面的な魅力を浮かび上がらせようとしている。

20/6/10(水)

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