評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります
堀 晃和
ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。
クライ・マッチョ
22/1/14(金)
TOHOシネマズ日比谷
公開初日に劇場に駆け付けたい映画がある。自分にとってはクリント・イーストウッド監督(91) の作品だ。120年以上の映画史で、イーストウッドこそ唯一無二の存在と言っていいだろう。俳優と監督の両方の分野で、これほどまでに世界的名声を獲得した映画人は他に見当たらないからだ。 監督・主演を務める新作『クライ・マッチョ』は、初監督作品『恐怖のメロディ』から50年、劇場公開40本目という記念碑的な意味合いを持つ。撮影時は90歳。しかし、演出にも演技にも、年齢を感じさせない瑞々しさが溢れている。イーストウッドはまた傑作を撮ってしまった。 カウボーイだったマイク(イーストウッド)はアメリカのロデオ界の元スター。老齢の今は孤独な日々を送っていた。ある日、恩人の牧場主が訪ねてくる。メキシコにいる別れた妻から10代の息子ラフォを連れ戻して欲しいという。国境を越え、ラフォを見つけたマイクは車で帰途につくが……。 見所はいくつもある。特に冒頭に痺れた。疾走する車を捉えた俯瞰のショットから車内に切り替わると、ルームミラーには運転者=イーストウッドの涼し気な眼差しが。「目」だけで観客をワクワクさせるその映画的センスには脱帽するしかない。
21/12/31(金)