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恩田 泰子
映画記者(読売新聞)
43年後のアイ・ラヴ・ユー
21/1/15(金)
新宿ピカデリー
実らなかった若き日の恋の相手がアルツハイマー病で施設に入ったと知った老人が、彼女を追って同じ施設へ入り、失われた愛の記憶を取り戻そうとする――というお話。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』でしみじみと老境を演じたブルース・ダーンが、今作ではロマンチックを貫き通す。 ダーンが演じる主人公クロードは元演劇評論家。かつて愛した舞台女優リリアンと同じ施設に入るために認知症を装い、入ってからはぐいぐいアタック。でも彼女は彼のことがもうわからない。そこで彼は一計を案じる。 金にあかせた老人の冒険。いい気なものだと思わないでもないのだけれど、クロードのリリアンへの愛、そして演劇に対する信仰が報われるクライマックスにはやっぱりぐっと来る。たったひとりの大切な人が記憶してくれるということが人にとっていかに幸福なことか。そんな思いだけはきっちりと見せる、一点突破主義の映画である。
21/1/13(水)