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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

【2月28日で閉幕】白髪一雄

今を遡ること60年以上前、天井から吊した縄に体を委ね、床に置いたキャンバスの上の油絵の具を足でこねくり回してして絵を描く画家が現れた。画家を目指して美術学校で日本画を学ぶも満足できず、その後はほぼ独学で油絵を制作。キュビスムからの影響を思わせる半具象絵画からいきなり絵画空間を拒絶するような抽象画を経て、30歳頃に足の動きによる身体性と油絵の具の物質性を前面に押し出し、「フット・ペインティング」という大画面作品を制作し始める。それは1954年頃のこと。翌年には、それまでの絵画・彫刻という表現形式の常識を突き破ろうとする活動を展開していた金山明、村上三郎、中村敦子らと、吉原治良をリーダーとする「具体美術協会」に所属。第2次世界他戦後の1950年代から60年代にかけて、日本の美術家たちは同時代的に進行する欧米の美術動向に敏感に反応し、美術界の価値観の転換を図った。白髪もまさにその一人であり、絵画だけでなく「泥に挑む」というパンツ一丁で泥の山と格闘するパフォーマンスなど、狭量な「美」という概念ではとらえきれない表現の欲望と実験を実践。 こうした動向は1940年代半ばからフランスを中心に展開したアンフォルメルや、同時期にニューヨークで展開していた抽象表現主義とも連動する時代の動きであり、疎外されていく身体性をいかに再活性化するかという課題を抱え込んだ試みであったと。関東の美術館でも白髪作品を鑑賞することはできるのだが、初期から晩年までの絵画90点に加えて立体作品や資料類を一挙にまとめて体験できる貴重なチャンス。 とにかく作品がデカい。印刷物やカタログ等の図版で見ていたのでは実感できない、絵の具の層のうねりと色彩の融合は圧巻。年齢を経るにつれて色彩は鮮やかさを増し、作品空間は宇宙的な広がりを獲得していく。2008年に83歳で亡くなるのだが、70歳を超えても衰えない体力と創作意欲に脱帽!

20/2/15(土)

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