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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

企画展「日本・チェコ交流100周年 チェコ・デザイン100年の旅」

世田谷美術館で見逃してしまい、京都での巡回展にわざわざ行くわけにもゆかず、と思っていたら葉山の神奈川県立近代美術館に戻ってきた『チェコ・デザイン100年の旅』。東欧・中欧の近現代美術やアニメーションに強い同館は、トリを飾るにふさわしい会場だ。 まずはアルフォンス・ミュシャ(ムハ)を輩出したアール・ヌーヴォーから始まり、アール・デコやバウハウスの影響など、全ヨーロッパ的なデザイン思想の勃興の中のチェコスロヴァキアという構図があぶり出される。そして愛犬の姿を表紙にしたカレル・チャペック『ダーシェンカ』の初版を目にすれば、思わず頬が緩んでしまう。 だが興味深いのはやはり第二次大戦後の社会主義期だ。作家としての突出した表現が許されない時代だからこそ、デザインは大衆の日常生活との間に緊密な関係を持とうとした。最大公約数的な簡素さに徹したスクーターや掃除機、電話などのプロダクト・デザインは、どこか頼りなさげだが見ていて飽きないし、世界がアニメーションの先進国としてチェコを認めるのもこの頃。「もぐらのクルテク」も尖端的なチェコ・デザインなのだ。 さらに映画ポスターなどは宣伝機能を超越したものになり始めるが、その代表的傑作であるロベール・ブレッソン監督のフランス映画『やさしい女』の謎めいたポスター(オルガ・ヴィレチャロヴァー=ポラーチュコヴァー作)も見逃せない。シネマもデザインの眼で捉えようとする、この展覧会の柔軟さを楽しんでいただきたい。

20/8/12(水)

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